村上昭子(1979.2)助動詞ラウ:中世末期の用法
村上昭子(1979.2)「助動詞ラウ:中世末期の用法」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社
要点
- 中世末のラウに終止法が多く、しかも係助詞の結びが多いことについて、以下の2点から考えたい
- ラウと係助詞との関係
- ラウとウとの意味上の関係
- 1点目、
- ラウはコソの結びとして用いられることが多く、ゾ・カの場合も(ゾ・カそのものの衰退の傾向に反して)多い
- コソはラウで結ぶことが多く、ウで結ぶ例は極めて少ない
- コソがあればラウで終止し、コソがなければウで終止するという使い分けがあると考えられる
- このとき、他のコソの結びは、レで終わる語(ラ行動詞・一二段動詞、ウズ・ベシ…)に偏るので、コソ~已然形というよりはコソ~レに固定化したと見ると、
- ウ・ラウはその形式に沿わないので、他の語に先駆けてコソ已然形の呼応を失ったのだろう
- ウの終止がない理由は、助動詞ラウが推量表現の強調を担っているためであると考える
- ゾの場合もラウが多く、これはラムが推量の強調を担うことを示し、
- カの場合はウの結びも見られるという点で異なるのでこの点について考えると、
- ラウの場合はウズラウの結びが多い。このウズラウは「より明確に推量表現であることをあらわせる」ために、疑問の結びに用いられている
- 前期抄物に多いカ~ラウは衰退して、後期抄物ではカ~ウが増えているように見える
- 2点目は、ランがンに同化していくという山口明穂説を追認する
- ウは未来、時間に関係ない推量を表すとともに、現在の推量も表す
- ラウは現在よりも、時間に関する推量を多く表し、未来に関する推量は表さない
- よって、ラウはウの領域に含まれており、種々の用法を持つウよりも「曖昧さがない」ために、強調とよく結びついたのであろう
雑記
- 日本語学会、学術会議の件にノータッチの方に一口賭けますね