ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(4)助動詞「らう」「うずらう」の用法

山田潔(2001.9)「助動詞「らう」「うずらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出2001

要点

  • ツラウに引き続き、ラウ・ウズラウの意味用法について考える
  • ラウについて、
    • ゾ・コソの結びが大半を占め、村上1979の言う通り、推量の強調をラウが担うと考える
    • その他の「強調」の根拠として、サコソとの呼応もある
    • 疑問との呼応もあるが、感嘆や疑問を表すので、やはりラウは「確かな推量」と考えてよい
  • ラウの時制について、
    • ラウはラム同様に現在推量を表すが、未来・過去の推量の例もある
    • また、ウ・ウズにも過去推量の例がある
    • ラウは基本的には現在推量なのだが、「テアルラウ」で過去推量を表すこともある
  • ウズラウについて、
    • ツラウ同様に複合辞であると考えられる
    • これもまた、一定・サコソ・サダメテとの呼応があることから、確かな推量を表すと見られるが、
    • ゾ・コソの結びとしては用いられないので、確からしさはツラウ・ラウよりも幾分弱い
    • また、基本的にはテンス的に未来を示す
  • 以上より、ツラウが過去、ラウが現在、ウズラウが未来に対する確かな推量 という体系が認められる
    • 玉塵抄のウズラウは確かな推量の副詞との呼応がなく、時代が下るにつれて「確かな推量」へと偏ったものと見られる
  • まとめ、
    • ウズラウはラウ・ツラウと同様確かな推量を表す
    • ウズラウの確からしさの度合いはラウ・ツラウよりは強くない
    • ウズ>ウズラウ>ウの順に確からしさが強い

メモ

  • 確かさの違いで分担があるというよりは、推量の方法の違いによって結果的に確かさのグラデーションが出るって考える方がよさそう