ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

京健治(1993.6)「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義

京健治(1993.6)「「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義」『語文研究』75

要点

  • キリシタン資料や狂言に見られる旧終止形の例について考える
    • 既に消えたとされるツ・ヌ・タリ・ナリ・タシ・形容詞終止形が当時の口語にも生きていたものと考えられる(天草版で新たに現れる例がある)*1
  • これらの旧終止形は、意味が切れずに下に続く「不十分終止」で、鎌倉時代以前にも例がある
  • 中世後期口語資料の旧終止形は、たまたま古形が混入したのではなく、不十分終止が生き続けたものであり、これによっていくつかの言語現象が説明され得る
    • シの成立

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p.6

  • ウズ・ウズルの併存状況
    • 従来、ウズは「強い語感」などとされてきたが、旧終止形が中止法として用いられたと考えるべき

雑記

  • 不十分終止、誤解を招く術語だと思うんだよな~、「ご飯も食べてない 宿題もやってない」とか普通に言うわけで、
  • 文を要素として提示してるのであって、別にそれが「不十分な終止」ではなくないか?ということ

*1:これは別に、終止形という形態が生きていたと考える必要はなさそうだけど