近藤泰弘(1992.3)丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に
近藤泰弘(1992.3)「丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に」『辻村俊樹教授古稀記念日本語史の諸問題』明治書院.
要点
- ハベリは謙譲語的側面と丁寧語的側面があるが、そのアスペクト的性格については明らかでない
- ハベリと非敬語の対応としては以下の3タイプが想定される
- 1 状態性のアスペクトの敬語化:アリ、形容詞、形容動詞、名詞ナリ、ズ
- 2 動作を示す非敬語形の丁寧語化:動詞
- 3 リ・タリの丁寧語化
- タイプ1はハベリに変わってもやはり状態性を保持するので、以下の制約がある
- ヌが承接しない
- タイプ2のハベリは、上の動詞のアスペクトをそのまま引き継ぐ(アスペクト的に中性)
- かた時と、の給にあやしくなり侍ぬ。(竹取)
- ヌへの承接は形容詞やズハベリには見られず、動詞のみに見られる
- 「「動詞」を単に丁寧語化した「動詞連用形+はべり」が存在するということになるのである」(p.26)
- タイプ3の場合、リ・タリ+ハベリ/ハベリ+リ・タリは存在せず、「「り・たり」自身が「動詞連用形+(て)+はべり」などの語形に変化する」
- なんじがもちて侍るかくや姫、たてまつれ(竹取)
- テハベリはヌに承接することがなく、やはり状態性アスペクトを示す
- 「~となりにて侍り」(源氏・明石)のように、明らかにタリがテハベリになった例もある
- 以上をまとめると以下の通り
- ハベリのアスペクト的意味の並存は意味的な混乱をもたらしそうであるが、丁寧語自体がそういった状態を許容する特徴を持つ*1ようである
- これは本です/奇妙です(タイプ1)
- やかましかったです/面白いです(タイプ2)
雑記
- 大学1年生に4年間大学で過ごす上で何が大事かみたいなこと話すとき、自分の過ごしてき方をぜ~んぶ棚にあげて喋る