ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

金沢裕之(1991.12)明治期大阪語資料としての落語速記本とSPレコード:指定表現を中心に

金沢裕之(1991.12)「明治期大阪語資料としての落語速記本とSPレコード:指定表現を中心に」『国語学』167.

要点

  • 明治期中期の速記本、末期の落語SPレコードが、明治期大阪語の資料として有用であることを示す。
  • コピュラのヤを事例とすると、
    • 近世末期(穴さがし心の内そと):若い女性、ヤロウ・テヤッタに偏る使用が
    • 明治中期(落語速記本):若い男性を中心として他世代にも広がり、特にテ敬語でのヤの移行が顕著。言い切りはヤに移行せず、ジャを保持。
    • 明治末期(落語SP):ヤが一般的(ジャは3割程度)になり、活用形による偏りもなくなる。
  • なお、資料性について、
    • 落語速記は、速記である(口演でない)という点に問題点があるが、「一定の評価は与えてよい」。
      • 落語速記にはダが一定数見られるのであるが、これは、速記記号を文字に直す「反訳行為」の中で書き言葉的要素が混入したことによるものか。
    • SPレコードは有力な資料であるが、一見、同時期の『口語法調査報告書』がヤに移行したとすることとの関係が問題となる。これは、後者が公的・間接的な調査であり、前者が社会全体の情況を描いたものであるもので、両者がともに当時の実態(の一端)を反映するものである。

雑記

  • 国語学』ってJ-STAGE登載し(てくれ)ないんだろうか?(国語学DBを知らない人もこの世には多い)

(3) 前身誌(継続必須・遡及登載任意) (…) 新規にカレント誌を J-STAGE に登載する場合で、既に過去に前身誌がある場合は、カレント誌とともに前身誌についても J-STAGE に登載することができる。なお、カレント誌を J-STAGE に公開せずに前身誌のみを J-STAGE に登載・公開することはできない。 https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/j-stage_criteria_for_publication_1.0.pdf