吉野政治(1990.7)「上代のタメについて」『万葉』136.
要点
- 形式名詞タメは、上代において将来の利益・目的・目標を示し、中古以後に漢文訓読の影響によって受身・原因・理由を表すようになったというのが通説である(岩波古語、時代別など)が、上代のタメは、原因・理由を示すものと見る方がよい。
- Vムタメが推量の意の場合には理由を、意志・希望の場合には目的を示すように見える。
- 推量:剣太刀…君に逢はむため(604)
- 意志・希望:奈良の都に行きて見むため(806)
- が、結局意志の場合も、「行って来たいため」と解して、「行って来たい」と希望する行為が後の行為を引き起こしたと考えれば*1、「理由」と解することができる。
- このことを踏まえつつ、「理由」を以下のように分類するとき、タメは、ホ「将来因」とヘ「目的因」にのみ見られる。*2
- Nガタメについては、
- a1がタメ: Nが行為の主体になる場合(降り積む雪のために)
- a2がタメ: Nが補足語になる場合(研究したい雪のために)
- a2は「利益となるように」のニュアンスがあるが、これはタメ自体がその意を持つのではない。
- とすると、原因・理由の意味も漢文訓読によって加わったのではなく、広義原因(上図)のうち時間的に前にあるものにもタメが使われるようになったものと見ることになる。
雑記
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