ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山田潔(2021.12)『玉塵抄』の勧誘表現:「~たらば良からう」「~て良からう」

山田潔(2021.12)「『玉塵抄』の勧誘表現:「~たらば良からう」「~て良からう」」『抄物の語彙と語法』清文堂出版.

要点

  • 玉塵抄には以下の2種類の勧誘表現(ここでは、「発話者が対者に行為の実行を求める表現」を含む、ややこしいので以下、「勧め」としておく)があり、
    • A:~たらば良からう・~たが良からう
    • B:~て良からう
  • Aは、
    • Ⅰ 比較のヨリを伴う場合:「~ウヨリ~タラバヨカラウ」などの構文で「勧め」を表す。
    • Ⅱ 単独で用いられる場合:以下の3種があり、1,2 は「勧め」を表し、(2の一部と)3は「適当」を表す。
      • 1: 「タラバヨカラウ」「タガヨカラウ」
      • 2: 「未然形+バヨカラウ」「~ウガヨカラウ」
      • 3: 「~タガヨイ」「現在形+ガヨイ」
  • Bは引用漢文の「可・宜・当・須」(ベシ類)に対応して用いられるので、基本的に「適当」で、対話文の場合に「勧誘」を表すものと見る。
  • この2種は、以下の2点のにおいて異なる。
    • Aが「現状に比してさらに適切な行為・行動を具体的に提案する」のに対して、Bは「その方が「適当」だとする範囲にとどまる」。結果的に、Bにはヨリの共起例が稀である。
    • Aは積極的な勧めを表すので、Bには見られるカ・ヤラとの共起例(~アッテヨカラウカト…)がない。

雑記

  • ショーンKは嘘ついてあんなに怒られたのに山口謠司はなぜ現役なのかという問題