ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

鈴木博(1977.12)医方大成論抄における用語の違いについて

鈴木博(1977.12)「医方大成論抄における用語の違いについて」『国語学』111.

要点

  • 医方大成論抄の東大本・京大本の2本の間に見られる相違について。
    • 京大本には「安芸道本」、東大本には「済庵」の奥書がある。
    • 東大本・京大本は転写の関係になく、姉妹関係であると見られる。
  • 断定辞において、京大本にはヂヤを主としてデヤ・ヂヤアなどが見られ、東大本にはダとジャのみが見られる。
    • 講者の言葉は、大文典のいう「Giaでもなく、明瞭なDeaでもなく、その中間のもの」であって、京大本・東大本いずれも、何らかの意味でのかき分けがあるわけではないものと見る。
  • 四つ仮名は東大本が誤る例が多い(長音の開合にはそれほど差が見られない)。
  • 京大本・東大本で語形が異なる例があるが、概して京大本が、「正形と考えたのを採ろうとする気持が強かったのではないか」
    • アヤシイ(京)/アイシイ(東)、ヲモユ(粥、京)/ヲモイ(東)、アヲムキ(京)/アヲノキ(東)
    • シトモナガリ/シタムナガリ、マギレサウモナイ/マギレサムナイ、ソノママ/ヤツハリ(そのままの意)
  • 京大本は「ことばを整えようとする意識」があるが、『大成和抄』と比べれば、一段化例が拾えるなど、生の言葉に近い。

雑記

  • 抄物大系とか抄物資料集成のうしろの解説、読みまくりたい