ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

高見三郎(1990.6)『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」

高見三郎(1990.6)「『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」」『女子大国文』107

要点

  • 杜詩続翠抄にはマジイがある程度用いられており、ベイも固定せずに用いられている

前提

  • 杜詩続翠抄はナリ体だが、ナリ・ゾは口語性の一つの目安に過ぎないので、マジイ・ベイ周辺の語形から考えたい

続翠抄のマジイ

  • 当代において、マジイはマイに比して一般的ではないが、続翠抄には割合多い(マイ:マジイ≒4:1)
    • しかも、用法を問わず用いられているようである
      • マジイ。/マジイト~/マジイN/マジイナリ/マジイゾ/マジイニ
    • 桃源の抄物にはマジイはほぼ見られず、少ない例もマジイNに偏る
    • 林宗二の毛詩抄・三略口義にはマジイがない
  • 続翠抄の抄文を組み入れる林宗二『杜詩抄』は、マジイをマイに改める例があり、それは全て林宗二筆部分である

続翠抄のベイ

  • 続翠抄のベイは桃源の抄、宗二の抄と比べると上接語にバリエーションがある
    • 宗二の毛詩抄ではツベイ、アルベイ、イベイ、スベイへと集中する
  • 続翠抄のベイは杜詩抄においてもベイのままであることが多いが、これはベイそのものは宗二も用いていたためだと考えられる

雑記

  • 坐骨を立てるクッションがほしい