田中志瑞子(2008.3)「『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて」『訓点語と訓点資料』120.
要点
- 『毛詩国風篇聞書』(以下『聞書』)と『毛詩聴塵』との間には極めて類似する箇所があり、宣賢は『聴塵』の参考資料として『聞書』の記述も取り込んだものと考えられる。
- このことを踏まえつつ、聴塵と聞書の関係性、聴塵の成立について考える。
- 聴塵に現れる口語的表現を見ると、前半4巻までに偏りがあることが分かる。
- 口語助動詞、ラウ・ウズ・ウなど
- オノマトペ
- 聞書が現存する箇所では、聴塵との一致率が高く、これらの表現は「『聞書』を利用したことによって『毛詩聴塵』に入り込んだと思われる」
- 上のことを踏まえると、聴塵は、巻4までと巻5以降とで大きく2つに分けることができる。これと同様、大きな違いが認められるものに、宋代の新注の採用がある(土井1976)。
- これも、聞書現存箇所においては対応が認められ、聞書の利用は巻4までであったと考えることができる。
- 聴塵には巻5以降にも「家説」「師講」などの語が見えるが、これは、巻5以降も聞書を利用したことを意味するものではない。
- 巻4までと巻5以降とで内容に異なりがあるわけではないので、この相違は聞書が巻4までしかなかったことによる。宣賢は自らも毛詩の講義を行っているので、巻5以降は、聞書を除く資料と、それまでに宣賢が得てきた知識をもとに作られたものと考えられる。
雑記
- 科研DBから持ってきたデータをCiNiiにデフォルトで表示するのをやめなさい