ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

佐伯暁子(2009.4)平安時代から江戸時代における二重ヲ格について

佐伯暁子(2009.4)「平安時代から江戸時代における二重ヲ格について」『国語と国文学』86-4

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と関連して

要点

  • 近世以前では、現代で容認されない二重ヲ格が容認されることがある
  • そのあり方の整理

現代語における二重ヲ格

  • ヲの組み合わせが必須補語と副次補語のときの場合に許容される
    • *ペンキを壁を塗る
    • 吹雪の中遭難者捜索した
    • 雨の中グランド3周走った

近世以前の二重ヲ格

  • 現代では非文法的な「対象ヲ対象ヲ」の二重ヲ格
    • 負フ男ヒシト食タリケレバ、(今昔)
    • 三字ツヾイタ名、中キルガ多ゾ(玉塵抄)
      • これらは、「AヲBヲ」の、Aで全体(男)について述べBでその一部(肩)について述べるという関係にあるが、他のパターンもある
  • そもそも例数は少ないが、今昔に多め
  • 対格+対格が最も多く、移動格+移動格、対格+移動格は少ない
  • f:id:ronbun_yomu:20180820164553p:plain
  • 「2つのヲ格が同一の役割を持つ場合に、略述と詳述の関係にある」と記述できる
  • 二重ヲ格の例数の少なさは、「~ノ~ヲ」に比べて制約が多かったことにあるか