川島拓馬(2019.4)「逆接形式「くせに」の成立と展開」『国語国文』88(4)
要点
- クセニの成立・変遷過程と、特にクセニが非難・不満を表すことについて考えたい
- 名詞クセは中古からあり、クセ+ニは抄物に例がある
- このクセニは「順接的」ではあるが、接続の機能はニによるもので、名詞クセの意を残す
- 近世前期の例もNノクセニもこれと連続的で、「~であるものに常として」を表す
- 前件に評価性を含む人物、後件に否定的な評価が来るという特徴がある
- 「なりあがり者」「こつい客」「阿呆」など、それそのものが評価を含む(現代語では「大人のくせに」がOK)
- 18C後半に、逆接と解釈される例が見られ始める
- ぶ男のくせに、うつくしい女房をもちたがり(落噺梅の笑)
- 「前件と後件が同一主体に共存している」ことが話し手にとって受け入れがたいために、「前件と後件が矛盾する」という逆接的な解釈が可能になると考えられる
- その後、活用語を承ける例が増え(接続助詞としての性格は19C以降に強まる)、タ形・テイル形も増える
- ノニ(青木2016[2014], 宮内2003, 2007)は、クセニと異なり逆接関係の明示が本質
- クセニの接続助詞化には名詞クセの語彙性が関わっており、モノ・トコロなどの形式名詞系のものとは同列には考えられない
- 「内容語が機能語に変化する事例において、特に資材となる内容語の語彙的意味の抽象度が低いと思われる場合、個別の語の持つ特性に注意を向けることが重要である」
雑記
- リッツのような事態にならないことを望んでいる