ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

川口良(2017.9)若者ことばに見る(間)主観化について:「大丈夫」の新用法に関して

川口良(2017.9)「若者ことばに見る(間)主観化について:「大丈夫」の新用法に関して」『文学部紀要(文教大学)』31-1

要点

  • 断りの「大丈夫」の発達を主観化・間主観化と関連付けて考える

大丈夫の新用法

  • 断りの「大丈夫」
    • (お代わりは)大丈夫です
    • バーはお付けしますか?大丈夫です
  • 相手の申し出を拒否する用法が若年層で一般化
  • 歴史的に見ると*1、もとは立派な男性を指す一般名詞
  • 室町期に形容動詞化、「きわめて丈夫であること」
    • 大丈夫な心なものは(荘子抄)
    • この意味の変化に主観化を見いだせる*2
  • 近世に「あぶなげのないさま」へ
    • 身上は大丈夫だ(浮世床
    • さらに主観化したものと見る
  • 近世末に副詞化(≒まちがいなく)
    • そんなことは大丈夫ござゐません(英対暖語)
    • 「聞き手の懸念を打ち消す」点で、間主観化したものと見る
  • 断りの「大丈夫です」は、聞き手の懸念ではなく、気遣いに対して、「そのように気遣っていただかなくても大丈夫です」といって断る配慮表現
    • この点で、新たな間主観的用法を持つようになったと見る

気になること

  • 日国論文なのはさておき、発達の経路をどう想定しているんだろうか?断りの「大丈夫」の萌芽として副詞の大丈夫があったことを述べているが、現代以前に死んだ用法なのだからそことそこが繋がることはないのでは、と思った

雑記

  • 最近ぼーっとすることが多く、100円ならいいけど130円はちょっと……とか思い始めてたら、コンビニのグミ売り場で数分立ち尽くしてしまった。お菓子って高くなったな~。ちなみに結局つぶグミを買った。硬いポイフルみたいで好き。

*1:用例引用はすべて日国より

*2:「「きわめて丈夫である」「しっかりしている」というプラスの評価は、話者の主観に基づく判断と考えられ」ることを根拠とするが、であれば名詞の大丈夫も主観判断では?