ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

川瀬卓(2011.4)叙法副詞「なにも」の成立

川瀬卓(2011.4)「叙法副詞「なにも」の成立」『日本語の研究』7(2).

要点

  • ナニモに以下の2種があることを踏まえ、その歴史的変化について考える。
    • 数量詞相当:ごはんをなにも食べなかった。
    • 叙法副詞:なにも野菜が嫌いなわけじゃないよ。
    • 一方で室町には、以下のような例がある。
      • 上下ぬがせ、あつかひ人なにもとりてやるなり(虎明本・きんや)
  • 歴史概観、
    • 中古はほとんどが肯定文で用いられ、
    • 中世末~近世には否定との結びつきが強くなる。
    • 近世後期には叙法副詞の例が見られるようになる。
      • コレ手めへ、何もふさぐこたアねへ(膝栗毛)
  • 叙法副詞の成立過程について、
    • 近世の数量詞用法のなにもが非存在文に偏ることを踏まえると、(4.1)
    • 特に「~ことはない」を文末に持つ例が、単なる「事態の非存在」ではなく「事態の不必要」の意味を帯びる場合があり、そのとき、ナニモが不必要の意味を呼応すると再解釈されて、叙法副詞用法が成立したと考える。(4.2)
    • その後、述語のバリエーションも増える。(4.3)

雑記

  • この7行目の「動サルカ」の朱点、不濁点?

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