佐々木淳志(2013.3)「「語の安定化」と二段活用の一段化」『愛知教育大学大学院国語研究』21
要点
- 佐々木(2010)の続き
- 坂梨(1970)などで検討されている音節数と一段化の関係性について、「語の安定化」の観点から見る
調査
- 「単音節語の一段化が早い」ことは指摘されているが、音節数の多寡による考察は十分でない
- 浄瑠璃以外でも坂梨(1970)の見解が当てはまるのか
- 表より、浄瑠璃のみならず近世中期口語に広く共通する傾向として認められる
- 音節数に関して、
- 一音節の場合、「ねる」「でる」は一段化する。「得る」のみ二段を維持するが、これは、複合語で用いられたことが影響するか
- 二音節以上では特に地の文において、二段活用を維持しようとする場合があるが、「あつる」「みだるる」のように、本来の形式を維持する力が語の安定化を図る力に勝ったもの
- 上二段・下二段の差異に関して、「上二段は下二段より変化が早かった」ことが指摘されているが、それはそもそも、上二段活用の中心が二音節語であって、全体的にそう見えただけに過ぎない*1
- 助動詞の場合、す(さす)・しむ・る(らる)は、助動詞全体では5%程度の一段化率で、これは、助動詞と一体となって長音節語を構成することによる
他の観点
- 複合動詞後項の場合、一段化率は下がる(一語として見れば音節数が増える)
- さやをもつて引あぐる
- ながらふ・やすらふは全て一段化している*2
- いまだ門の内にやすらへるを見付、
- 語ごとに見ると、ヤ行・ハ行(ワア行)という子音としての独立性が低い動詞に一段化の進行が認められる
- こしらゆ・うろたゆ・かんがゆ・やすらふ・ながらふ
雑記
- 一段化のいらすとが尽きてきた