ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

渡辺由貴(2007.3)「と思う」による文末表現の展開

渡辺由貴(2007.3)「「と思う」による文末表現の展開」『早稲田日本語研究』16

要点

  • タイトルそのまま、モダリティ形式史として
  • 渡辺(2015)の前提

hjl.hatenablog.com

「と思う」

  • 文末、終止形、非過去という条件で用いられる、助動詞的な「と思う」
    • 明日は雨が降ると思う。
    • 明日は雨が降るだろう。
  • 近代以降の発達と言われるがそれは本当か、どのような発達か、という点を明らかにする
  • 前接形式を分類すると、
    • 願望:たいと思う
    • 意志:うと思う
    • 感情:うれしいと思う
    • 推量:だろうと思う
    • 判断:おかしいと思う
    • 事象:だと思う
  • 中古においては用例は少なく、例は意志・感情に偏る
    • うれしくゆかしさまさりて、いつしか(見たい)と思ふ(枕)
  • 中世においては形式が広がり、後期に推量の接続例が見える
    • いつも〳〵るすに、さけをぬすんでのむによって、じやあらふとおもふ(虎明本)
  • 近世においては総数が少ない*1
  • 近代口語においては「と思う」が多く、近代文語にはほぼ使用されない

まとめ

  • 以上まとめ、
    • 文末表現「と思う」による推量表現は、近代以前にも散見されたものの近代になり急増
    • 意志や願望などに接続するタイプの「と思う」は中古から存在し、中世では、意志に接続するタイプの「と思う」の量が目立って多い。中世後期にうずと思う、近代にだろうと思うの例が見られる。

雑記

  • ほんとかな?

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*1:調査資料の問題?読本も混じっていて問題あるか。