ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

引用

辻本桜介(2022.4)中古語における間接疑問文相当の引用句

辻本桜介(2022.4)「中古語における間接疑問文相当の引用句」『日本語の研究』18(1). 要点 古代語に間接疑問文は存在しないと考えられているが、間接疑問文に相当する用法を持つ引用句があることを主張する。 まず、間接疑問文の用法を持つことが妥当である…

山本佐和子(2021.3)中世室町期の注釈書における「~トナリ」の用法

山本佐和子(2021.3)「中世室町期の注釈書における「~トナリ」の用法」『筑紫日本語論叢Ⅲ』風間書房. 要点 杜詩抄に特徴的に用いられる、原典の登場人物の発話の解釈に用いられる「トナリ」について考える。 蘇源明トノハ去モノトヲ知リサウタホドニ、酒銭…

矢毛達之(1999.12)中世前期における「文相当句+ナレバ・ナレド(モ)」形式

矢毛達之(1999.12)「中世前期における「文相当句+ナレバ・ナレド(モ)」形式」『語文研究』88. 要点 中世前期特有の語法に、「文相当句+ナレバ・ナレドモ」があり、 この盃をば先少将にとらせたけれども、親より先にはよものみ給はじなれば、重盛まつ取…

辻本桜介(2022.4)中古語の状態性述語を持つ引用構文について

辻本桜介(2022.4)「中古語の状態性述語を持つ引用構文について」『文学・語学』234. 要点 状態性述語をとる引用構文の文法論的位置付けを検討する 杉の御社は、しるしやあらむとをかし。(枕227) 吉田(2017)は体験話法であることに重点を置いたもので、…

吉田光浩(2017.6)中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に

吉田光浩(2017.6)「中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に」『文学・語学』219. 要点 中古和文の形容詞述語文に散見される、「心中詞を形容詞が承けて文を終止する例」について検討する 女君、〈いかに聞くらむ〉とはず…

辻本桜介(2017.10)文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として

辻本桜介(2017.10)「文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として」『ことばとくらし』29 要点 中古語では、文相当句を受けるトにナリが付く。このことについて考える *僕が思ったのは、「もう春が来た」とだ。 かく言ひそめつとならば、何かはお…

竹内史郎(2005.3)上代語における助詞卜による構文の諸相

竹内史郎(2005.3)「上代語における助詞卜による構文の諸相」『国語語彙史の研究』24 要点 「2つの事態がトで結ばれた文」(月を出でむかと待ちつつ居るに・1071)について、従来の研究が同列に扱ってきた、引用構文と並列文の2種の区別の必要性を論じる 里…

小西いずみ(2013.10)西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化

小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院 要点 トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った) データ、 富山…

渡辺由貴(2011.3)中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」

渡辺由貴(2011.3)「中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」」『早稲田日本語研究』20 前提 中世における文末表現の「と思う」「と存ず」の位置付けを、以下2点から考えたい 話し手と聞き手の関係性 モダリティとしての表現性 分析1 身分の関係を見る…

岩田美穂(2007.12)「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて

岩田美穂(2007.12)「「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて」『語文』89 要点 並列のノ・ダノが引用のトに支えられて成立した形式であること、 他の並列形式と同様の変化の方向性を持つものとして捉えられることを示す 前提 「言…

日高水穂(2013.10)複合辞「という」の文法化の地域差

日高水穂(2013.10)「複合辞「という」の文法化の地域差」藤田保幸編『形式語研究論集』和泉書院 要点 「という」を事例として「文法化の地域差」を考える 前提 共通語において、トイウ/ッテ/ッチュウ・ッツウ 引用・伝聞に用いられるが、ッチュウ・ッツ…

渡辺由貴(2007.3)「と思う」による文末表現の展開

渡辺由貴(2007.3)「「と思う」による文末表現の展開」『早稲田日本語研究』16 要点 タイトルそのまま、モダリティ形式史として 渡辺(2015)の前提 hjl.hatenablog.com 「と思う」 文末、終止形、非過去という条件で用いられる、助動詞的な「と思う」 明日…

渡辺由貴(2015.9)文末表現「と思ふ」と「とおぼゆ」の史的変遷

渡辺由貴(2015.9)「文末表現「と思ふ」と「とおぼゆ」の史的変遷」『日本語文法』15-2 要点 近代に定着するモダリティ相当形式の「と思う」と、その前身の「とおぼゆ」について 問題と前提 発話者主体、非過去・非否定という条件で、モダリティ形式として…

松尾弘徳(2009.6)新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例

松尾弘徳(2009.6)「新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例」『語文研究』107 要旨 福岡における若者中心の方言の変化に見られる、助動詞ゲナが「数学げな嫌い」となる、とりたてのゲナの成立について 九州のゲナ 近世期に…

藤田保幸(2016.2)引用形式の複合辞への転成について

藤田保幸(2016.2)「引用形式の複合辞への転成について」『国文学論叢』61 要点 「と」+「言う」「思う」「する」に由来する複合辞が種々あることについて、共時的観点から、「引用形式から複合辞がさまざま生まれるのには、それなりの契機というべきいき…