ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

鈴木薫(2020.2)中古中世における「むとす」と「むず」

鈴木薫(2020.2)「中古中世における「むとす」と「むず」」『国語研究(国学院大学)』83.

要点

  • 以下の分類を用意し、ムトスとムズの用法差を記述する
    • 以下、①⑤は現代語のヨウトスルにはなく、ムトス・ムズには存する
    • 意志的
      • ①自身の意向(文末):(自身が)深き山に入りなむとす(大和)
      • ②自身の意向(文中):お金を払おうとしたら、財布がなかった。
      • ③他者の意向:彼は子どもたちを医者にしようとしている。
    • 無意志的
      • ④実現への推移:長かった冬が終わりを告げようとしています。
      • ⑤推移を伴わない推量:かやうに忍びたらむことをば、いかでか伝へ知るやうのあらむとする。(源氏・薄雲)
  • 中古~中世後期の用例の推移を見ると、
    • ムトスは、現代語に見られない①と⑤が中古には見られ、中世後期になると見られなくなる
    • ムズは、
      • 中古ではムトスに似るが、次第に①と⑤に比重が移って、ムに近づいた
      • 未実現・仮定と見られる例が中世前期・後期に見られ、これもムへの近似として捉えられる*1

p.45

雑記

  • 1日が短け~、なぜなら昼に起きているから

*1:ウズがベシに似るという指摘とどう整合するだろう?