ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

鈴木浩(2002.2)近世上方語のミルヤウナ:ミタイダ成立前史

鈴木浩(2002.2)「近世上方語のミルヤウナ:ミタイダ成立前史」『文芸研究』87

要点

  • ミルヤウナが比況表現に用いられるようになる過程と
  • ミルヤウナ→ミタヤウナの移行について

ミルヤウナ

  • ミタイダはミタヤウダから変化したもの
  • ~ヲミルヤウナまで遡って、どのような変化を遂げたかを見ていくと、好色伝授の例が早い
  • 近松浄瑠璃では、
    • 眼前にない状況を予測する:後日の難儀見る様な
    • そのとき浮かんできた心象を表す:目にちろ〳〵と見るやうで
    • 比況(心象の下位類):和田の新発意を見る様な
  • ミルヤウナは、[[~ヲミル]ヤウ]と分析するべきものだが、
    • 刺激因→「(私は)~をみるやうな」 という叙述から、
    • 「刺激因は喩えをみるやうな」 という叙述へと変化したものと捉えられる
    • (私は)かはいやねかほ(寝顔)見る様な → (朝鮮人参は)尾張大根見る様な
      • 前者と後者は主語も異なる
  • 上方洒落本ではミルヤウナは比況表現として用いられていく。その中で、より辞的なものへと変化する
    • 形態面:ヲを伴わなくなる
    • 意味面:視覚性からの逸脱(物語見るやうなせりふ
    • キクヤウナも並行して見られるが衰退する
  • 享和期以降にミタヤウナが現れ、次第にミタヤウナ専用文献が見られるようになる
    • ミルヤウナとの意味の差異はなく、テンス・アスペクトの問題ではない
    • (注7、タの仮想事態を表す働きと関わるか?)

雑記

  • 発表とか原稿とか、今年の大きな用事が終わった。さようなら2018年