ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

田中章夫(2010.10)否定条件句「(行か)ないで、~」と「(行か)ずに、~」

田中章夫(2010.10)「否定条件句「(行か)ないで、~」と「(行か)ずに、~」」『近代語研究』15

要点

  • 江戸語・東京語における否定のズニ・ナイデの周辺について考える
  • ナイデは雑兵(1657-83頃)に既に見られ、現代の東京語に受け継がれる
    • ナクテに可換なナイデの用例も早い(浮世風呂「気がつまらねで、勤めいい」)
  • ズニは上方語系だが、江戸語にもかなり見られる
    • サ変につく場合、明治~昭和の一時期に、「シズニ」も行われた
    • ズニ以外に、ザラニも稀に用いられる
  • 上方語系のンを用いるンデも見られるが、明治以降に次第に衰退する
    • イデは江戸語資料でも上方者にしか用いられない
    • 「ナイデ」は接続助詞テやコピュラのデとの関連が説かれるが、これらヌデ・ンデ・イデなどがナイデの成立を促したと見るのが自然ではないか*1
  • ズトは江戸語から大正頃までは、
    • ントも見られてよいはずだが、「行かなければ」の意味でしか使われない
  • すなわち、図1の通り

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p.374

  • GAJ115「仕事に行かないで遊んでばかりいる」の分布
    • 東海にンデがあり、これが江戸に持ち込まれて、東京語に引き継がれたと見る
    • 関西で有力なのは、江戸東京語にはないント
    • イデはやはり西(広島)の言葉

雑記

  • Plague inc. のことめちゃ考えちゃうけど、今やるとさすがに不謹慎かなという思いもある

*1:さらっと大事なことを仰る…