ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

野田尚史(2015.4)文の階層構造から見た現代日本語の接続表現

野田尚史(2015.4)「文の階層構造から見た現代日本語の接続表現」『国語と国文学』92-4

要点

  • 接続表現の、文の階層構造の中の位置付けを考える

前提

  • 南モデルを発展させた野田に基づく、述語語幹~対人的ムードまでの階層
    • 述語語幹・ヴォイス・アスペクト・肯定否定・対事的ムード・対人的ムード
    • 閉め・られ・てい・なかっ・た・ようだ・ね
      • 従属節、副詞成分、主題成分についてはすでに研究があるが、接続表現についてはない

分類手法

述語と呼応するもの

  • 接続表現と階層との呼応の有無によって、接続表現の階層を認定する
    • あの店は手打ちパスタがおいしい。しかも、コーヒーとプチデザートを付けても1000円で済む
    • あの店では手打ちパスタを頼みたい。*しかも、コーヒーとプチデザートもいっしょに頼みたい
    • 「しかも」は述語の対事的ムードの階層と呼応するので、対事的ムードの階層の接続表現
  • さらに、他の階層について制限がないかを確認すると、
    • しかも、コーヒーとデザートを付けても1000円で済んだ。→テンスの制限はない(テンスの階層に属さない)
    • *しかも、~も付けなさい。→対人的ムードにも制限があるようにも見えるが、「未確定を表す対事的ムードと呼応しない」のが主要なものと見る
  • 文法的階層と意味的階層があることに注意する
    • 「そして」は文法的には対人的ムードと呼応するが、意味的には内側の階層(肯否)を接続する
    • 基本的には文法的な階層を重視する

述語と呼応しないもの

  • 「つまり」は名詞句を接続する場合と述語と呼応する場合がある
    • 述語語幹の階層の場合:ニュートン力学、つまり古典力学の基礎は運動学である
    • 対事的ムードの階層の場合:~なければなりません。つまり、個々の法則どうしの関係を結びつけていかなければならないわけです。
      • 意味的には「全体のつながりをとらえ」と「個々の法則どうしの関係を結びつけ」が接続されるので、述語語幹の階層

分類

  • 以下の3類に分類される
    • テンスの階層「そして」「すると」「そのとき」など
      • ~を考え。そして~怒りがこみあげてき/*こみあげてくる
      • ~と私は聞きまし。すると令子はこう言いまし。/*言うに違いない
        • 「推論」の「すると」は対人的ムードの接続表現
    • 対事的ムードの階層:「ところが」「それで」「しかも」「つまり」「なぜなら」など
      • チケットはどうしても手に入らない。*ところが、どうしてもそのコンサートに行きたい
    • 対人的ムードの階層:「だから」「でも」「ただし」「あるいは」「じゃあ」「ところで」など
      • この中身は、わたくしでなくてもいいの。カラクリでも構わないのだわ」「だから、賀茂道平の計画に加担したんです?」
        • 意味的には、テンスの階層どうしを接続している
  • 以下の課題あり
    • 呼応の実態の調査
    • 同一形式の用法差
    • 接続表現と接続助詞の関係性 cf.接続表現「すると」に対応する接続助詞「と」の関係性

雑記

  • 水曜日のダウンタウンのクロちゃんのやつ、あんまり笑えないわりにその理由がよく分からないが、それは以下のどれかだろうと思う
    • 自分の感性がそういうの(端的に言えば、しんどいブサイクを笑う文化)を受け付けなくなったから
    • 見ている人も大して変わらなくない?という気持ちがあるから
    • 人を陰で笑ってる構図が(設定だとしても)耐えられないから
    • 自分の精神性がクロちゃんに似ているから
      • とはいえ、作ってる側は社会実験的な側面を楽しんでいそうで、やや安心(?)する。盛大なアイヒマン実験バラエティっぽい