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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

堀畑正臣(2018.2)動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって

堀畑正臣(2018.2)「動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって」西岡宣明ほか編『ことばを編む』開拓社

要点

  • 動詞の自他対立における、方言独自の発達事例について

「かたる」と「かてる」

  • 「加わる」の意で用いられる九州方言の「かたる」
    • あんたも仲間にかたらんね(熊本)
    • 他、東北、北関東などにも見える
  • 他動詞(仲間に加える)の「かてる」が肥後などに見られる
    • 「夫婦になる/夫婦にする」の意でも対応する
    • 他、「かたる」を他動詞で使う場合と対応して、「かてる」を自動詞とする場合もある
    • 日国は「語る」からの派生とするが、別項にすべきだろう
  • -aru, -eru の自他対立(ex.掛かる・掛ける)で、これは周圏分布ではなく、地域毎に成立したものと考える

「のさる」

  • 水俣病をのさり(=神様からの授かりもの)と思え」のような「のさる」が、天草、水俣、宮崎に見られる
  • aru による自動詞の派生は、 既に eru > u などの対立があるところに新しく自動詞を作りうる、派生力の強い派生方法であり、「のさる」もこれに沿うもの
    • 開ける・開くに対する開かる 合わせる・合うに対する合わさる 載せる・載るに対する「載さる」
  • 共通語ではノル→ノス→ノセルとなったものが、九州西南部ではノル→ノス(ル)→ノサルとなったものであろう
  • 以上のように、自他対応の類推によって生じる語には地域ごとに成立するものがあり、分布に偏りが見えることがある

雑記

  • 刻刻を一気見してしまった、原作も8巻完結でまとめて読むのにちょうどいいので一気見したのは正解だった