ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

岩田美穂(2007.12)「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて

岩田美穂(2007.12)「「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて」『語文』89

要点

  • 並列のノ・ダノが引用のトに支えられて成立した形式であること、
  • 他の並列形式と同様の変化の方向性を持つものとして捉えられることを示す

前提

  • 「言ったノ聞いてないノと喧嘩しても」「書類ダノ文房具ダノ」のノ・ダノについて考える
  • 他の例示形式と異なる出自を持つが、体系的な整理は出来るか?
    • タリ・ナリ:助動詞終止形
    • ヤラ・トカ:疑問・不定の複合形式
    • これらはいずれも主節に対する注釈句を作る段階を経て並列形式になるという共通する性質がある

記述と歴史

  • 現代語においては、
    • 望ましくないものの列挙
    • 省略が不可:*教科書だの定期を買わなければならず、
    • ノは名詞に使えない:*グッチのプラダ
    • 並列句内部に南のD段階までを含むことができる
    • トと共起することが多いが、トを伴わなくても意味は変わらない
  • 歴史的に見ると、語を並列する用法から徐々に句へと拡張していく
    • 裳ノヒノ袴ノナントヽ云テ(史記抄)/いやとしをとるの、正月用意のと仰られて(虎明本)
    • コピュラを伴うのは虎明本以降
  • 統語的には、「AノBノト」のようにトを伴って引用句となるのが典型であり、近世以降に省略が起こる
    • トの機能がノ並列句に焼き付き、省略することが可能になったと考える

ノ並列句の位置付け

  • ノ並列句における引用と例示の関係性について、引用という行為が「複数の中から任意に一つ取り上げる」ものであること、また、それによる例示が元の発話を2つ以上取り上げたものであると見る
  • 他の例示並列形式の変化には以下の方向性が認められるが、
    • i 文末要素
    • ii 主節に対する注釈句
    • iii 文中の要素に対する修飾句
    • iv 名詞句、動詞句
  • トは最初からiiiの段階に相当する機能を持っていたために、そこから発達することが可能であった
  • 「名詞ノ名詞ノ」についてはヤラと同様、集合内の列挙とその全体集合の表示(iii段階)から、並列句自体が名詞句相当の統語的機能を獲得する
    • お前也。あいやけ同士、
    • 牢櫃の、にかゝるのというと、

雑記

  • きょうの料理ビギナーズ(おばあちゃんでてくるやつ)、近所のみんなとパーティーをする回なのにおばあちゃん以外に声がなくて、世界が終わった後っぽかった