宮地朝子(2010)ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として
宮地朝子(2010)「ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として」田島毓堂編『日本語学最前線』和泉書院
要点
- ダケの限定用法が他用法に遅れることは知られているが、その成立はよく分かっていないし、他用法との連続性も認められる
- 以下の歴史的変化として記述できる
- ① 形式化・叙述名詞化:思いの丈、居丈、身の丈、丈なる
- ② 「ありたけ」のイディオム化:ありたけ
- ③ 「長さ」に留まらない分量・尺度一般を表す「値名詞」
- 「膝丈」のような身体性の制約が解除される
- とりたての変化に値名詞→形式副詞→遊離数量詞の段階を想定する立場(江口2007)に沿う
- ④ 名詞でありかつ副詞句を構成する「形式副詞」として〈程度〉用法を獲得:ありったけ
- ⑤ 近世に〈限定〉用法を得て、〈限定〉解釈の割合を増やし、:
- ⑥ 近代に統語的にとりたて助詞の特徴を示すようになる(助詞化)
- 限定のダケの成立要因は内的には説明し難い
- バカリの「同一事態の限定」への高まりが後押ししたか?
雑記
- もしくは今度でる三省堂のやつ、たくさん買って学生に配ろうかなあ