李淑姫(1998.10)「大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために」『筑波日本語研究』3
要点
- 虎明本の因由形式を、南の従属句の観点に基づいて分類する
前提
- 中世の因由形式の包含関係を階層的分類と関連付けて考えたい
- ホドニ、ニヨッテ、已バ、トコロデ、アイダ、ユエニ、ニヨリ
- これまでの研究は文体的な硬さに基づく分類であったが、階層的にはどうか
- 小林1973では上接語の差異が述べられており、これに注目したい
- ニヨッテは、推量・意志・希望を表す助動詞には下接しないが、ホドニはする
- ニヨッテの後件に推量・意志・命令・依頼は来ないが、ホドニには来る
因由形式の包含関係
- 以下を、[[x]y]の包含関係にあるものと考える
- たとへはどん太郎殿でも[ひさひさたよりもなかつた+によつて[にあはしきつまをもつた+程に]]、あくる事はならぬ
- 虎明本ではこの関係において、ニヨッテとホドニが入れ替わることはない
- 虎明本の包含関係の例を示す
- [[ニヨッテ]ホドニ]はあり、[[ホドニ]ニヨッテ]はない
- [[トコロデ]ホドニ]が多く、[[ホドニ]トコロデ]は少数
- [[ホドニ]アイダ]が多く、[[アイダ]ホドニ]は少数
- [[ユエニ]ホドニ]はあり、[[ホドニ]ユエニ]はない
- [[ニヨリ]アイダ]はあり、[[アイダ]ニヨリ]はない
- [[ニヨリ]ニヨッテ]が1例のみ
- [[ホドニ]ホドニ]はあり、[[ニヨッテ]ニヨッテ]もある
- これは虎明本だけに見えるのか?を考えるためにキリシタン資料を見ると、[[ニヨッテ]ホドニ]はあり、その逆はない
階層論的分析
- 南の階層論に基づいて、以下のように分類
- ウ・ヨウ、ウズル、マイが入る場合にC類
- これらが入らない場合にA類かB類
- ニヨッテ・ニヨリ・ユエニは推量を含まず、否定、テンス、主格は入るのでB類
- ただし、ニヨッテは後件に推量・願望が現れるので、(現代語のノデ・タメニに比べて)「C類的なB類」であるといえる
- ホドニ・トコロデ・アイダの場合は推量・意志が包含されるので、C類
- 後件も自由に現れる
- 上の内容と併せて考えると、
- [[B]C]の包含関係であると解釈できるが、この中の細かい関係性を見れば、以下の通り
まとめ
- 以下の包含関係のうち、
- 左下の9種は[[C]B]が成立しない
- 他の×は文体的要因によるものが多い
雑記
- これのチラシが貼ってあって、いやまずは自分のとこの職員笑顔にしてあげなよって思った(自分は思わず笑顔になりました)