ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

李淑姫(2002.8)『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層

李淑姫(2002.8)「『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層」『筑波日本語研究』7

要点

  • 応永本論語抄のニヨッテは、キリシタン資料・虎明本と比べると階層的にはホドニに近い

前提

  • 抄物における因由形式についての小林1973の記述
    • ホドニ・ニヨッテは口語的、已然バ・ニヨリテ・ユエニは文章語的
    • ニヨッテは勢力としては小さい

応永本論語抄の因由形式

  • 已然バはウズレバがないのでB類
    • ただし、後件に推量・意志・命令が来るので、現代のタメニ・ノデとは異なる
  • ホドニはマイホドニの例があるのでC類
    • ントスルホドニの例もがある
  • ニヨッテはウ・ヨウ、ウズル、マイが来ないが、ベシを包含する例はあるのでC類寄りか
  • ユエニもニヨッテと同様、B類ではあるがベシを包含する
  • 以上より、已然バ、ニヨッテ、ユエニはB類、ホドニはC類

応永本論語抄の包含関係

  • 以下のパターンがある
    • [[已然バ]ホドニ]
    • [[ニヨッテ]ホドニ]、[[ホドニ]ニヨッテ]
      • 過渡期的な用例として見るか、もしくは、ニヨッテの階層をキリシタン・虎明本と比べてホドニに近い階層であったと見ることができ、ここでは後者を採る
    • [[ホドニ]ホドニ]

まとめ

  • 以上より、応永本の論語抄の階層は次のように整理される*1

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p.78

雑記

  • この後数本韓国の『日本学報』に同趣の論文があるが、現在アクセスできる環境になく…

*1:無理にB,C類に当てはめるからこうなるのであって、包含関係を示すだけでよいようにも思う