ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

否定

佐田智明(2002.3)副詞「決して」の成立について

佐田智明(2002.3)「副詞「決して」の成立について」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 「決して」は当初(近世文化頃まで)、「さだめて」「必ず」の意を持ち、否定とも呼応するようになる。 化政期以降、例えば八笑人では否定との呼応に偏り、文政期以…

川瀬卓(2011.4)叙法副詞「なにも」の成立

川瀬卓(2011.4)「叙法副詞「なにも」の成立」『日本語の研究』7(2). 要点 ナニモに以下の2種があることを踏まえ、その歴史的変化について考える。 数量詞相当:ごはんをなにも食べなかった。 叙法副詞:なにも野菜が嫌いなわけじゃないよ。 一方で室町には…

高山善行(1997)否定推量の諸相

高山善行(1997)「否定推量の諸相」『大手前女子大学論集』31. 要点 ジ・マジがある中で、ザラムが必要とされた理由と、ザラム・ザルラムとの関係について考えたい。 小松(1961)に「ザラムがジの文中用法の欠如を補完している」という指摘がある。 ザラム…

村上謙(2013.12)明治大正期関西弁資料としての曽我廼家五郎喜劇脚本群

村上謙(2013.12)「明治大正期関西弁資料としての曽我廼家五郎喜劇脚本群」『埼玉大学国語教育論叢』16. 要点 喜劇俳優兼脚本家の曽我廼家五郎(1877生)による関西弁喜劇脚本群の資料性について検討する p.5 全体的な資料性について、 五郎作品群には、関…

大西拓一郎(1999.11)新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって

大西拓一郎(1999.11)「新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって」『日本語学』18(13) GAJ151の打消過去の分布と中央語史を比較したい p.100 GAJ151「行かなかった」では、 東にナカッタ、西にナンダ ナンダ類を囲むよ…

金澤裕之(1997.4)助動詞「ない」の連用中止法について

金澤裕之(1997.4)「助動詞「ない」の連用中止法について」『日本語科学』1 要点 近年、規範的ではない否定の連用中止法「~なく」が認められる このとき本塁上には捕手はいなく木村の快走でこの回二点をあげて優位に立った。 ナク中止の特徴2点、 状態述語…

奥村彰悟(1997.8)「ないければ」から「なければ」へ:一九世紀における打消の助動詞「ない」の仮定形

奥村彰悟(1997.8)「「ないければ」から「なければ」へ:一九世紀における打消の助動詞「ない」の仮定形」『日本語と日本文学 』25 要点 ナイケレバが18C後半から19C前半にかけて見られることは知られているが、ナケレバの変化については明らかになっていな…

奥村彰悟(1996.8)江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現

奥村彰悟(1996.8)「江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現」『筑波日本語研究』1 要点 江戸語のナイケレバをネバ・ズハと比較して考える 使用傾向として、 明和期は、打消にはヌ・ズとナイが並用され、ナイの勢力は極…

坂梨隆三(1995.3)打消の助動詞「ない」の発達

坂梨隆三(1995.3)「打消の助動詞「ない」の発達」『人文科学科紀要 国文学・漢文学』27、坂梨(2006)『近世語法研究』武蔵野書院 所収 要点 打消のナイの活用は滑稽本には終止連体形しかなく、連用形ナク・仮定形ナケレはないが、人情本になると出揃うよ…

永田里美(2000.8)勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として

永田里美(2000.8)「勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本には勧誘表現Vマイカがあるが、虎寛本ではVウデハアルマイカが該当し、Vマイカは見られない そへ発句をせまひか > 此に添発句をせうでは有るまいか …

高木千恵(2005.3)大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に

高木千恵(2005.3)「大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に」『阪大社会言語学研究ノート』7 要点 大阪方言における分析的な否定形式コトナイと、否定疑問形式コトナイカについて考える 述語の否定形式は以下の通りで、 p.74 これら…

坂梨隆三(2001.5)ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」

坂梨隆三(2001.5)「ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」」宮下志朗・丹治愛(編)『シリーズ言語態3書物の言語態』東京大学出版会 要点 大文典の否定の記述に「上げないでござる」「申さないでござる」があるが、「なんで」とあるべきものではないか し…

村上謙(2012.3)明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する

村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21 要点 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある 成立要因が問われていない そもそも音変化説…

田中章夫(2010.10)否定条件句「(行か)ないで、~」と「(行か)ずに、~」

田中章夫(2010.10)「否定条件句「(行か)ないで、~」と「(行か)ずに、~」」『近代語研究』15 要点 江戸語・東京語における否定のズニ・ナイデの周辺について考える ナイデは雑兵(1657-83頃)に既に見られ、現代の東京語に受け継がれる ナクテに可換…

京健治(2003.12)否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察

京健治(2003.12)「否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察」『語文研究』96 要点 否定過去のナンダの成立と、特に連用形ナンデ、並立助詞的ナンダリに注目しつつ、 ナンの由来にはヌアッタ説を採る 前提と問題 ナンダ→ナカッタへの交替については詳しい…

小林賢次(1995.2)「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開

小林賢次(1995.2)「「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開」『日本語研究』15 問題 ンバカリのンを打消のヌとして捉える立場と、推量のムとして捉える立場がある(前稿)が、どちらが妥当か 湯沢説は、当初はムバカリであったが、江戸時代には既に打…

黒木邦彦(2018.3)否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源

黒木邦彦(2018.3)「否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源」『Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス』21 要点 西日本のナンダ -(a)naNda の起源を、東日本の否定動詞接尾辞ナフ{-(a)nap-}に求める 構成 まず…

小柳智一(2004.7)「ずは」の語法:仮定条件句

小柳智一(2004.7)「「ずは」の語法:仮定条件句」『万葉』189 要点 特殊語法「ずは」について、通常の「ずは」と共通する解釈(仮定条件句)を提示し、 その差異について、前句と後句の関係性が、通常の場合は順行的、特殊語法の場合は逆行的であるものと…