ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山口堯二(1991.6)推量体系の史的変容

山口堯二(1991.6)「推量体系の史的変容」『国語学』165

要点

  • ム系の推量辞の歴史について考える
  • 古代語の推量辞は、「現実のありようをなぞる」形で事態の現実性を識別する、「現実密着」型
    • ムード表示を担うだけでなく、むしろ対象のありようの表示をする機能を持つことが、連体・準体用法を持つことにも現れる
    • 主体のムード表示は推量辞そのものの働きではなく、文末の機能に依存してのことである

f:id:ronbun_yomu:20200226201523p:plain
p.28

  • 中世は、時制的分担によって事態の現実性を捨象し、想定の作用度に応じて事態を分担する「想定分別」型
    • ム・ラム・ケムという時制の分担が、ウ・ウズ(ラウ)・ツラウに解消・再編される
    • 例えばムード表示の機能において、ラウはウより強く、ベシはそれらよりも弱い(客観的)

f:id:ronbun_yomu:20200226201544p:plain
p.32

  • 近現代語は、ダロウが推量、ウが意志を分担するような、ムード識別型

f:id:ronbun_yomu:20200226201607p:plain
p.35

雑記

  • 学生に「90年代の論文だと「古いな~」って思います」って言われて、「まぢ!?」って言っちゃった
    • でも確かに、「その事柄に時制の対立を許すような芸当がウによって不可能」とか言わんもんな~と思う