ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(二段活用動詞などに見られる一段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房小林隆1997「動詞活用における一段化傾向の地理的分布」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院

要点

  • 方言における一段化の問題について考える
    • ① いわゆる二段活用動詞の一段化(二段活用の保存)
    • ② サ変動詞「する」、カ変動詞「来る」の一段化
    • ③活用語尾先頭形態の安定化
  • ①について、
    • 歴史的には、a 上二段が下二段より早く(ただし狂言台本では上二段が残存)、b 音節数の少ない語の方が早く、c 終止・連体形が已然形よりも早い
    • a は九州方言では同様(オキルがアケルより進行)だが、和歌山ではアケルの方が進行
    • b もネルが広く分布し、中央語に沿う
    • c は終止・連体形の方がよく残存し、文献と方言の関係が逆転している
      • 仮定形よりもタラやト・ギー・ナラなどに押され気味であるためか
    • 九州の二段の残存地域は意志形のオキュー・アキュー・ニューの分布に対応し、
    • 語幹の安定化の有無と並行する
  • ②について、
    • スルの上一段化は近畿以東に盛ん、近畿には中世後期以降のシラルルを反映するものはある
    • スルが下一段化へと向かう地域が、中部西部、香川、山口などにある
    • クルは関東・近畿で一段化が活発、茨城の終止形キルは江戸語状況の反映か
    • 他、東北・北陸にはコへの統合がある地域もある
  • ③について、語幹の安定化の傾向は以下の3つに分けられ、図10のように分布する
    • A: 弱い(二段活用が残存、スル・クルも一段化しない)
    • B: 中間的
    • C: 強い ※図のC2はサ変の五段化地域
    • 歴史的にはA→B→Cの順に進行

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