ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

副助詞

衣畑智秀(2005.3)副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における

衣畑智秀(2005.3)「副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における」『日本語文法』5(1) 要点 極限の副助詞には最低限(≒だけでも)を示すものがないが、ダニはその両方を持ち、上代では最低限に限られていたことが知られる この歴史変化について…

宮地朝子(2010)ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として

宮地朝子(2010)「ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として」田島毓堂編『日本語学最前線』和泉書院 要点 ダケの限定用法が他用法に遅れることは知られているが、その成立はよく分かっていないし、他用法との連続性も認められる 以下の歴史的変化…

坂詰力治(1993.7)室町時代における助詞「バシ」について

坂詰力治(1993.7)「室町時代における助詞「バシ」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 鎌倉時代語のバシが室町にどのように推移したかを観察したい バシの例は文語よりも口語資料に目立つ キリシタン資料には少ないが、これは宣教…

平塚雄亮(2019.7)甑島里方言のbasi

平塚雄亮(2019.7)「甑島里方言のbasi」『阪大社会言語学研究ノート』16 要点 九州方言でとりたて助詞的に使われる basi は、里方言では形式名詞的にも使われる tanpoo=ni=basi ita=to=jaroo / 田んぼにでも行ったんだろう sir-an basi=n goto / 知らないわ…

小林正行(2010.10)抄物資料における副助詞ガナ

小林正行(2010.10)「抄物資料における副助詞ガナ」『近代語研究』15 要点 小林(2005)以前のガナの状況を調べたい 抄物・キリシタンには全体的に用例が少なく、 上接語はほぼ不定語、 直接(ナニガナ)が先行し、ト等を介在するようになる(ナニトガナ) …

小林正行(2005.3)狂言台本における副助詞ガナ

小林正行(2005.3)「狂言台本における副助詞ガナ」『日本語研究(都立大)』25 要点 狂言におけるガナについて考えたい 保教本以降に使用数が増加することから、近世中期以降に新たにくわえられた例がある様子 上接語は不定語・名詞・引用句などがあり、 不…

小林賢次(1995.2)「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開

小林賢次(1995.2)「「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開」『日本語研究』15 問題 ンバカリのンを打消のヌとして捉える立場と、推量のムとして捉える立場がある(前稿)が、どちらが妥当か 湯沢説は、当初はムバカリであったが、江戸時代には既に打…

小田勝(2008.3)「しもは」考:「はしも」と「しもは」と

小田勝(2008.3)「「しもは」考:「はしも」と「しもは」と」『国語研究』71 要点 係助詞とされてきた「しも」が係助詞に上接する例「しもは」の検討 問題 助詞シは中古において、係助詞モと複合したシモのみが広く用いられ(この点で複合辞的)、副助詞で…

山田昌裕(2014.2)「デサエ」二種の由来

山田昌裕(2014.2)「「デサエ」二種の由来」『恵泉女学園大学紀要』26 要点 山田(2012)の続き hjl.hatenablog.com 問題 デサエには、連接「デ+サエ」と、融合化「デサエ」がある(山田2012) 連接デサエ:有名観光地{でさえ/で}、多言語での看板やパ…

山田昌裕(2012.10)「デサエ」の融合化とその背景

山田昌裕(2012.10)「「デサエ」の融合化とその背景」『表現研究』96 要点 デ相当でないデサエについて、その発生の背景を考える 融合化したデサエ 融合化したデサエの問題を扱う ひっきりなしに通る電車の音{でさえ/*で/が}、ここでは商店街の活気をさ…

小林正行(2006.1)狂言台本における助詞バシ

小林正行(2006.1)「狂言台本における助詞バシ」『日本語の研究』2-4 要点 狂言におけるバシについて、使用実態と用法の変遷を明らかにする 問題 従来の指摘 中世前期には目的格の語に接し、仮定・推量・意志・疑問・禁止と共起 中世後期には目的格以外にも…

小林正行(2014.3)狂言台本における例示の副助詞デモ

小林正行(2014.3)「狂言台本における例示の副助詞デモ」小林賢次・小林千草編『日本語史の新視点と現代日本語』勉誠出版 要点 タイトルまんま 近世狂言台本の例示のデモ(お茶でも)が、逆接仮定条件のデモの、最低条件の「せめて~だけでも」と、全面的肯…