青木博史(2017.11)「のなら」の成立:条件節における準体助詞
青木博史(2017.11)「「のなら」の成立:条件節における準体助詞」有田節子(編)『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版
要点
- ノナラについて、以下のことを考える
- 歴史的経緯
- 出張するなら/出張するのなら が意味的に同一であること
- ノナラが表す意味(認識的条件文)の歴史的研究からの記述
- 準体助詞ノは17Cまでに、ヒト・モノの表す代名詞ノをもとに成立(青木2005)し、準体句の環境に出現するようになる(ノニ・ノデ・ノダ)
- ノニ・ノダの定着を通じて、ノには「既定性」「承前性」という認識が慣習化する
- 「「の」の定着にしたがって、「背後の事情」「実情」といった意味は、「のだ」という形式に焼き付けられることとなった」
- ダロウはコピュラによる「判断」を含んだ推量形式として成立し、単純推量と事実推量を表しえたが、上の意味を含むノダロウが事実推量の領域を表すものとして定着する
- ノニ・ノダの定着を通じて、ノには「既定性」「承前性」という認識が慣習化する
- ノナラにもダロウ・ノダロウと似たことが起こったと考える
- 前史として、
- ナラは連体ナリ+バが中世に「接続」の役割を持つようになり、中世末にバが脱落したもの(小林1996)
- 「繋辞を介することであらゆる述語句への接続を可能にする」ナラバは、未ムや未バ・已バに比して近代的
- ナラバもダロウと同様に、コピュラを含むことで「判断」を経た仮定を表すこととなったと考える
- 仮定条件表現体系は、近世中期~後期にかけて、タラが完了性仮定(予測的・反事実的)を、ナラが非完了性仮定(認識的)を担うようになる
- ナラは連体ナリ+バが中世に「接続」の役割を持つようになり、中世末にバが脱落したもの(小林1996)
- ノナラは近世後期に例が見られるようになるが、これも認識的条件文を表すので、「認識的条件文」はナラ・ノナラのニュアンスの違いを説明できない
- 「「の」の「既定性」「承前性」に基づいて、「のだ」の仮定形と言うべき「実情仮定」を表すために作られたのが「のなら」である」と説明するのがよい
- この点、ナラはタラとの関係性の中で既に実情仮定に特化しているので、ナラ・ノナラにダロウ・ノダロウのような住み分けはない
- 前史として、