ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7)

要点

  • 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる
    • キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる
    • 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差し替えただけの記述(すなわち、デウスと日本の神を対等視してしまう)
    • これは、ロドリゲス以上に日本語に通ずる宣教師がおらず、「事実上の検閲者もまたロドリゲス自身に他ならなかった」ためであろう
  • この「大文典固有の編集態度」は宗教上のこと以外にも見いだされ、特に論語御成敗式目の引用が日葡に比して多いことが注目される
    • 引用文の論語と清家本論語集解、式目と清家系式目の一致率は極めて高く、
    • すなわち、ロドリゲス大文典の編纂には、「清家に関わる人物」が何らかの形で関与していたと考えられる
  • ただし、起請文はそれほど一致しない
    • 白文の読み下しに携わった人物による非清家系の文言、一般的な起請文の文言が混入したと考えるが、
    • そうすると、起請文を訓んだのはロドリゲスではなく、補佐した「日本人イルマン」であると考える(ただし、他の一致率を考えると訓読にも清家に関わる人物が携わった可能性も捨てがたい)
      • 本国人の助けによってロドリゲス本人の能力により記述したと考えられてきた大文典の把握に、新たな視点の導入が必要

雑記

  • 研究会したいネ