ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1)

要点

  • 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える
  • 二人の関係について、
    • 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高の敬意」や、マラスル・ゴザルを用いる
      • 尊敬+丁寧は、ヘイケの由来にはあるが、アドリブにはない
    • 右馬→喜一では、尊敬表現は命令文だけ(品格保持のため)で、丁寧表現も例が少ない
    • 両人を対等にしなかったのは、敬語の使い分けを観察させるためであろう
    • 人称代名詞は、喜一はワタクシ・コナタ、右馬はミドモラ・ソナタを用いる
  • ヘイケの和らげ方について考えたい
    • ケリは、タに置き換えられる他、「たと聞こえた」とその丁寧体、「たと申す」など、「夕に置き換えるという単純な作業を起点として、右馬之允への敬意表現をも併せて問題が多岐にわたってゆく」
  • アドリブ部、喜一→右馬のデコソゴザレとマラシテゴザルについて考える
    • ああ、これは忝い、冥加もないお茶でこそござれ、極と見えまらしてござる(284)
      • ミョウガモナイ」は『かたこと』で批判されるもので、「文章を粗野かつ野鄙にする2つの欠陥」(大文典)の1つである
        • cf. コソ係結の異例を作り出すことで「粗野と典雅を表し分けていた」こと
    • どちらも当代の最高の丁寧表現として生成されたものであり、
    • 当時の「現代語」がアドリブ部に反映されており、「上下関係を設定した二人の「平人」の間で交わされた形で「現代語」をハビヤンが記し止めようとしていた」と考えられる

雑記

  • あっ、これは2009に入ってるのか~