ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

キリシタン資料

中本茜(2016.2)天草版『平家物語』の副詞「まことに」の付加について

中本茜(2016.2)「天草版『平家物語』の副詞「まことに」の付加について」『国文学論叢』61. 要点 天草平家が評価の語にマコトニを付加するのは、「物語理解のため」という理由を超えた編纂態度であり、編者の関心の所在や主題の所在を窺うことができるので…

中野遙(2019.9)キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について

中野遙(2019.9)「キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について」『訓点語と訓点資料』143. 要点 日葡辞書の語釈に付される id est (すなわち、以下{IE})注記は、以下の構造を持ち、 注記対象の語(D)、注記する側の語(E) Xeidan.(誓断) i. Chic…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

豊島正之(1982.2)初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について

豊島正之(1982.2)「初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について」『国語と国文学』59-2 要点 現代語トモニの2用法 同格の場合にトモニ:AとBはともにデパートに買い物に行った 同格でないときにトトモニ:AはBとともにデパートに買い物に行った…

坂梨隆三(2001.5)ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」

坂梨隆三(2001.5)「ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」」宮下志朗・丹治愛(編)『シリーズ言語態3書物の言語態』東京大学出版会 要点 大文典の否定の記述に「上げないでござる」「申さないでござる」があるが、「なんで」とあるべきものではないか し…

小島和(2012.1)キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に

小島和(2012.1)「キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に」『上智大学国文学論集』45 要点 ヨリについての説明のズレについて考える 大文典(やアルバレス)はヨリに主格と奪格を認めるが、 日葡は奪格、比較…

小島和(2011.1)『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に

小島和(2011.1)「『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に」『上智大学国文学論集』 要点 天草平家の地の文が対話による語りであることに注目する 喜一は右馬に対して「こなた」を使い、右馬は喜一に「そなた」を使う この差…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(1)推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1971「推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態」『学芸国語国文学』7 要点 キリシタン資料におけるウ・ウズについての観察4点 1 ウは疑問詞と…

江口正弘(1990.12)天草版平家物語の動詞について:連体形の終止形化を中心に

江口正弘(1990.12)「天草版平家物語の動詞について:連体形の終止形化を中心に」『国文研究(熊本女子大学)』36 要点 標記の問題について、終止形と連体形の用法を以下のように分類する 終止形:A1 終止法 A2 ベシなどの助動詞に前接 A3 助詞トモ・ナ・ヤ…

川口敦子(2002.9)キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに

川口敦子(2002.9)「キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに」『国語国文』71(9) 要点 ゴザルの使われ方を手がかりに、キリシタン資料における「口語」「文語」について考える 天草平家における「世話」のようなものが…

小林正行(2010.10)抄物資料における副助詞ガナ

小林正行(2010.10)「抄物資料における副助詞ガナ」『近代語研究』15 要点 小林(2005)以前のガナの状況を調べたい 抄物・キリシタンには全体的に用例が少なく、 上接語はほぼ不定語、 直接(ナニガナ)が先行し、ト等を介在するようになる(ナニトガナ) …

風間力三(1967)ロドリゲス日本文典の引用した平家物語

風間力三(1967)「ロドリゲス日本文典の引用した平家物語」『甲南大学文学会論集』35 前提 天草平家の場合は訳文を通して原典を考えなければいけないが、ロドリゲス大文典の引例は直接の資料として扱うことができる 方法 天草平家と原拠本が同文であるもの…

福田嘉一郎(1991.4)ロドリゲス日本大文典の不完全過去について

福田嘉一郎(1991.4)「ロドリゲス日本大文典の不完全過去について」『詞林』9 要点 大文典の「直説法・不完全過去」に現在形が含まれるが、これは連体法である 前提 ロドリゲスは直説法において、ルもタも「不完全過去」を表すものとし、これはアルバレスラ…

岸本恵実(2018.5)キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば

岸本恵実(2018.5)「キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば」高田博行・小野寺典子・青木博史(編)『歴史語用論の方法』ひつじ書房 前提 大文典における「話しことば」と「書きことば」の区別について考えたい ロドリゲスは日本語の大きな特徴…

李淑姫(2000.8)キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に

李淑姫(2000.8)「キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本ではC類だったトコロデ・アイダが、キリシタン資料ではB類だった 前提 虎明本を分析した李(1998)では、 ニヨッ…

菅原範夫(1989.3)キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から

菅原範夫(1989.3)「キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から」『国語学』156 要点 ローマ字本キリシタン資料の誤字や翻字の偏りを手がかりに、以下の2点を指摘 ローマ字本は翻訳者と翻字者の手を経たものであり、 翻字者は複数…

吉田永弘(2012.3)平家物語と日本語史

吉田永弘(2012.3)「平家物語と日本語史」『愛知県立大学説林』60 要点 原拠本と天草版との対照による研究方法のあり方について 前提 一般的な諸本系統図のモデル(図1)は、書写過程以外における「作られた本文」を持つ異本の発生のある平家においては適用…

白井純(2001.9)助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として

白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3 要点 ヨリ・カラの主格標示用法について、 キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、 その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給…

矢島正浩(1993.2)天草版平家物語における打消推量・打消意志の助動詞:資料性との関わりを中心として

矢島正浩(1993.2)「天草版平家物語における打消推量・打消意志の助動詞:資料性との関わりを中心として」『愛知教育大学研究報告 人文科学編』42 要点 天草版平家において、極めて近い用法を持つマジイ・マイが併存することに着目し、その意味について考え…

小島和(2017.3)キリシタン資料における「ものなり」表現について:「教義文体」との関わり

小島和(2017.3)「キリシタン資料における「ものなり」表現について:「教義文体」との関わり」『日本近代語研究 6』ひつじ書房 要点 キリシタン資料の文末モノナリと教義書類との関連性について、ラテン語引用文と日本語訳を見ることによって分析 モノナリ…

川口敦子(2018.6)コリャードのt入声表記とツ表記:スペイン系写本との比較から

川口敦子(2018.6)「コリャードのt入声表記とツ表記:スペイン系写本との比較から」『三重大学日本語学文学』29 要点 コリャード自筆本に見られる特異なt入声標記とmizu(蜜)の表記について コリャードのt入声表記 コリャードはイエズス会式を踏襲している…