ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

江原由美子(2002.11)トモによる逆接条件表現

江原由美子(2002.11)「トモによる逆接条件表現」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』14

要点

  • 逆接仮定条件のトモが事実を述べる場合に用いられることがある(大わだ淀むとも)
    • このいわゆる「修辞的仮定」が何なのかを考えるために、トモの現象面を明らかにしたい
  • トモ文の論理関係は、「こうあるべきだと期待する推論過程に反する」、「Pトモ¬Q」と示せる
    • 守り戦ふべき下組みをしたりとも、~え戦はぬ也(実現済なので修辞的仮定)/会ひ戦はんとすとも、~よもあらじ(一般的な逆接仮定・竹取)の2者に異なる点は見られない
  • また、前件の事態を前提としない場合にもトモが使用できることから、「トモの前件は後件の事態を成立させる可能性が最も低い事態」と考えられる*1
    • かの御ゆるしなくともたばかれかし(源氏・末摘花)
  • 前接語から見ると、「話し手がその成立を発話時においてみなしうる事態が前件である」という共通性がある
    • キ・推量に接続しにくく、タリ・リ・ツ・ヌには接続できる
    • 状態動詞・形容詞・ズ・連体ナリの前接も多い:これも発話時において状態・存在が持続する
    • 「従来問題とされてきた修辞的仮定のトモは機能的にも他のトモと同じであり、特殊な用法として扱う必要はないのではないだろうか」*2
  • 後件のモダリティは他の仮定条件文と同様に未実現の事態がきやすいが、そうでない場合もある(が、「呼応を無視している」わけではない)
  • ドモの場合にはトモのような、「トモ節以外の事態においても成立する」という含意が見られない
    • その代わりに、複数的な事態や甚だしい事態が前件に来やすい

雑記

  • 大学行く機会が戻ってきそうなのでノートPC買うか悩む

*1:累加で全称する場合もあるからそうとは言えない気がするな~

*2:これはほんまにそう思う