青木博史(2003.3)「~サニ」構文の史的展開
青木博史(2003.3)「「~サニ」構文の史的展開」『日本語文法』3(1)
要点
- 原因・理由を表す「形容詞語幹+サ+ニ」について、句の包摂の観点から考える
- 消長について、
- 現代語で「特定の語彙に固定されてはいない」(影山1993)とされるが、
- 実質的にはほぼホシサニ・~タサニや感情形容詞に限られ、
- 近世に遡ると、属性・評価形容詞の例を拾うことができる
- 感情形容詞への制限は、サニ構文がコントロール構造になったことによる
- AハBガCサニD という構文の中で、主語AはDだけでなくCの主語としても機能し(Bは対象語)、
- それを満たすためにCは他動詞的な表現である必要があるために、感情形容詞の制限が生じ、それが極限化したのがホシイ・タイであると考える
- 成立については、中古の[[…ノ~サ]ニ]という構造から、[[…ガ~]サニ]という構造への拡張を想定する
- この時期のサニ構文はアマリとの共起が多く、(テなどと比べて)強い因果関係(柳田1977)を表す
- 句の包摂は通常は起こり得ないが、古代語においては以下の2パターンがあり、サニ構文は前者にあたる
- 従属節を構成:~サマニ
- 述語句を構成:~ガホ、~ヤウ、~ザマ、~ゲ
- 「ある種の連用成分が形成されることによって合成後の前部分が用言性を発揮することを可能にしている」と考えられる
- その後、サニは「アマリノ~サニ」に見られるように、再び、用言句を包摂しない[[…φ~サ]ニ]に戻ったものと考えられる