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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小田勝(2006)不十分終止の句(4)挿入句と成分の句化

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう

要点

  • 以下の特殊性について考えるために、挿入句の構文的職能について考える
    • 白き衣の萎えたると見ゆる着て、掻練の張綿なるべし、腰よりしもに引きかけて、側みてあれば、顔は見えず(落窪)
  • 挿入句(除去してその前後が適切に連続する不十分終止の句)は以下4類に分類できる
    • Ⅰ推量の助動詞を含み、下文に対する理由の推測を表す
      • この暁より、咳病にや侍らむ、頭いと痛くて苦しく侍れば、(夕顔)
      • これが不十分終止で表されるのは、理由を表す接続句内にム系助動詞や主体的ベシが生起できないという制約があることによる
    • Ⅱ 順接または逆接の接続句的に下文に続くと解釈される挿入句
      • …、かしこに人もなし[=いないから]、渡り給ひね。(落窪)
    • Ⅲ 主文中の語句や状況に対する補足説明、述者の但し書き、疑念など
      • 気高クシテ瑞正美麗ナル童、鬢ヲ結テ束帯ノ姿也、来テ、(今昔)
    • Ⅳ 詠嘆を表す
      • ゆかしく思ふ御琴の音どもを、うれしき折かな、しばし、すこしたち隠れて…(橋姫)
    • 挿入句は独立成分ではあるが、ⅠⅡは接続成分に擬することができる
  • 冒頭の落窪の例は、「目的格成分が話者によって推定されるものとして取り立てられたもの」(目的格成分の句化)であり、挿入句とは異質である
  • こうした成分の句化は、「主格」「目的格」「時を表す成分」の3種に限られる→小田1991

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雑記

  • Under Review になってはや4ヶ月