ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

吉田光浩(2017.6)中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に

吉田光浩(2017.6)「中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に」『文学・語学』219.

要点

  • 中古和文の形容詞述語文に散見される、「心中詞を形容詞が承けて文を終止する例」について検討する
    • 女君、〈いかに聞くらむ〉とはずかし。(落窪・巻2)
    • 根来(1973)は、形容詞述語の終止形終止文を、動詞述語文とは異なり「消極的・受動的」なものとして捉えるが、
    • 思考動詞に依らない上記のような表現は、ある経験が契機となってひとつの感情が引き起こされ、その感情の内容が形容詞によって表現されるもので、受動的というよりもむしろ「自発的」であるものと捉えられる
  • 現代語では「~と形容詞」は違和感があるが、中古和文の場合には一般的に見出される
    • この違和感は、感情形容詞述語がかつて持った述定のはたらきの一部が、現代語では弱まったことによるためか
  • これが体験話法として用いられることがあり、その場合には、以下のような表現効果を持つ
    • 感情形容詞終止形終止の言い切り文が持つ感情主の人称制限とその現場性によって、語り手の視点が〈いま〉〈ここ〉にあるものとして作中人物〈わたし〉に定位され、説者はそれによって作中人物の心情を共体験することができる(p.131)

雑記

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