吉田光浩(1996.3)「仮定条件句+うれし」の表現性について
吉田光浩(1996.3)「「仮定条件句+うれし」の表現性について」『大妻国文』27.
要点
- 中古和文の「仮定条件句+うれし」に、下例(うつほ)の後者のように、「聞き手に一定のリアクションを求めるはたらきかけ」の機能を持つものがあることを述べる
- いたはらるること、ものし給ふなるをなん、いとほしがり申し侍るを、けしうものし給はずば、いかにうれしからん。
- 必ず必ずものし給ふベくば、いかにうれしからん。[仲頼が参上したら、自己に「うれし」という感情が成立する]
- 聞き手に対しての働きかけの有無には少なくとも以下の三段階がある
- 依頼等のはたらきかけをなすもの:おしなべたらぬ心ざしのほどを御覧じ知らば、 いかにうれしう(源氏・若紫)
- 自己の願望を伝えるもの
- はたらきかけを行わないもの
- この表現は、消息や改まった対面の場面(ないしは儀礼的表現)に多く見られ、
- はたらきかけを行う例は、下位者から上位者あるいはほぼ対等の立場への例が多い
雑記
- 脱従属化する例もこの頃からあるのかな?