ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

村中淑子(2015.3)明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として

村中淑子(2015.3)「明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として」『現象と秩序』2.

要点

  • 清水紫琴(1868-1933)による関西方言小説「心の鬼」(文芸倶楽部3(2)、M30)が、明治期の京都方言資料として有用であることを示す
  • 待遇表現では、
    • 上向きの待遇では、男性はハル、ジョセイはオ~ヤスが多く、
    • 下向きの待遇では、男性話者にヨル・オルが、
    • 対者待遇では、ドスが現れる
  • コピュラは、男性にジャ(女性は使わない)、男性女性ともにヤ・ヤロがあり、
  • ノダ文には撥音形のン、ネン・ネヤなどは見られない
    • 疑問文の場合、詰問にはノヤよりノジャが使われやすい*1
  • 否定はヌ・ンが多く、ナイはない
  • 理由の接続助詞はほぼサカイでヨッテ系がなく、
  • 終助詞に男性のゾ・ゼ系が見られる、など

雑記

  • どこにあんねんと思っていた雑誌だったが、すごく馴染みのある感じのサイトで公開されていた(こういう感じでもCiNiiからリンクされるんだな)

*1:→上林(2019)