ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

大坪併治(1981)提示語法

大坪併治(1981)「提示語法」『平安時代における訓点語の文法』風間書房. *1

要点

  • 「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与へる形式」を「提示語法」と呼ぶと、平安時代訓点語にはそれを幅広く認めることができる
    • 第一義、即(ち)是れ平等法なり、(大智度論天安点)
    • 汝が、…有りと言ふ、是(の)事然(にはあら)不。(成実論天長点)
    • これは、「漢文そのものにこれに相当する構文があつて、これをそのまま直訳したところから生れた翻訳文法」である
  • 一方、記紀歌謡や万葉集に見出されることから、これが本来の国語になかったわけではないと見る
    • 針袋 これは賜りぬ(万4133)
  • が、決して例は多くなく、和漢混淆文に至って飛躍的に増加するので、本来的になかったわけではないが、「院政期以後における流行を将来したのは、やはり訓点語であったと推定しなければならない」

雑記

  • 青雲 それは

*1:「本項については別に述べたものがある」として、大坪(1969)「提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に」『佐伯梅友博士古稀記念国語学論集』表現社 が注されている。