ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

岩田美穂(2018.1)近世末期佐賀方言資料にみられる条件表現

岩田美穂(2018.1)「近世末期佐賀方言資料にみられる条件表現」『就実表現文化』12.*1

要点

  • 佐賀方言の条件表現の史的調査を行う。
    • 有田(2007)の枠組み(予測的、認識的、半事実的、総称的、事実的)に拠る。
  • 現代佐賀方言のついての記述によれば、
    • ギが全ての用法で用いられ、
    • ナイバが認識的条件文に分布し、
    • バは義務(イカンバラン)にのみ現れる。
  • 近世末期佐賀方言の調査では、
    • eバが認識的用法を除く全ての用法に分布し、タレバ・ナレバなどの派生形もある。
      • タレバは事実的用法、ナレバは認識的用法を中心とする。
    • ギはこの頃の成立か。タラ、ナラ、トなどの新しい形式も見られる。
      • おッ達の新小屋のちよふりんぼふのテヽいふギイ キヤアこなさりふばん(一寸夢見た物語)
  • 1978年収録のふるさとことば集成と対照すると、
    • バはほぼ義務表現に偏り、ギ・ナイの2形式の体系になっている。
  • 以上のまとめ

p.66

  • 変化の要因などの推定、
    • タラ・トが浸透しなかったのは、予測・総称を中心的用法とするレバが既にあり、必要性が高くなかったためか。
    • ナラ・ナレバは認識的用法で競合し、ナレバ>ナイバとなったと見る。
    • ギを含め、レバ・ナイバなど、「佐賀方言においては、繰り返しこのような「広い用法を持つ条件形式」が必要とされ変遷してきた」(p.67)

*1:CiNiiで取られてないけどなんで?って思ったら最近リポジトリに追加されたんですね