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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

近藤要司(2020.11)述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合

近藤要司(2020.11)「述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合」青木博史・小柳智一・吉田永弘編『日本語文法史研究5』ひつじ書房.

要点

  • ニアリ構文に係り結びが介入する例の変遷について考える。
    • 間なく恋ふれにかあらむ草枕(万621)
  • 上代は全体として不活発であり、~カアラム、~ハアラズなど、不確定・否定の形式に偏る。
  • 中古には、
    • ニヤアラムに、以下の2種6類があり、上代(ニカアラム)はⅠに限られるのに対して、Ⅱが新たに見られる。
      • Ⅰ 事実句と原因理由句が、複文あるいはそれに準ずる形を取り、相互に緊密な連携をしているもの。
        • 注釈型:[注釈]ニヤアラム、[事実句]
        • 題述型:[事実句]は~ニヤアラム
        • 原因結果型:[原因句]+[事実句]ニヤアラム」(原因推量に似る)
      • Ⅱ 事実句と原因理由句が形式的には相互に独立していて、意味的にのみ関係しているもの。
        • 解答案:[疑問語疑問文]。[解答案]ニヤ。
        • 解釈A:[事実句]。[解釈]ニヤアラム。
        • 解釈B:事実句の明示がないもの。
    • ニコソが新たに見られるようになり。
  • 中世前期には、
    • 結びの述語の形式の自由度が増し(ニ~アリケルなど)、
    • 解釈A・解釈Bの割合が増加する。
  • 変遷まとめ、
    • 接続形式は拡大し、述語の形式が確定的な表現にも広がる。
    • 文脈的機能はⅡが増える。
      • 「言わばⅠは形式に助けられて文脈的機能を果たしており、Ⅱは形式から独立して文脈的機能を果たしているのである。『今昔物語集』でⅡが増加しているということは、『源氏物語』に比較して『今昔物語集』のニアリ構文の方がニアリ構文自体の文脈的な機能が明確になってきたということである。」

雑記

  • これ普通に研究手法変わるかな、変わらないかな(新日本古典籍DBまるごと検索かけたい)
    • 正確さが劣るから従来的な研究だとどうしても「こんな例もある」以外の使い方を思いつけない