吉本裕史(2022.3)副詞「ちゃんと」の語史
吉本裕史(2022.3)「副詞「ちゃんと」の語史」『Nagoya Linguistics』16.
要点
- 以下のチャント2種のうち、a は様態副詞、b は評価成分であり、a → b の派生が想定される。その派生過程を確かめる。
- a [[ちゃんと動か]ない]
- b ちゃんと[[動か]ない]
- 上2種は、以下の差異を有する。
- 意味機能の観点(省略)
- 統語的には、*1
- 様態副詞は「存在動詞を除き、動詞の修飾を専らとし、否定のスコープ内に現れる」ので、これが行えない述語を修飾する場合は評価成分の例となる。また、テイルを修飾する場合も評価成分としてのみ解釈できる。
- 形容詞的に用いられる「ちゃんとした/している」の場合、様態副詞としてのみ解釈できる。
- 通時調査、
- 形状動詞・動詞修飾Ⅰ(擬音語)の例が早く室町時代に現れ、
- 近世になると「事態実現の完全さ」を表す例が見え始め、
- よく寝入て居たものをちやんとおこした(三教色・1783)
- 近世後期には評価成分の例が出現するが当期はテイル類修飾の例のみで、この後、修飾先が拡張する。
- 其手筈ちゃんとしてある。(鎌倉三代記・1770)
- 様態副詞のチャントと評価成分のチャントはいずれも評価を(前者は様態を、後者は事態そのものを)表すという点で共通する。中世後期において既に、様態副詞のチャントも「話し手の理想や規範に合致する様態」という評価的な修飾成分であり、評価成分への変化する素地を持っていたと考える。
- チャントの歴史的変化は、キットと共通する点を持つ。*2
雑記
- なんモ界隈みたいな感じで評価もなんでもいけそう、怖い用語である