ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

野沢勝夫(1993.4)妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として

野沢勝夫(1993.4)「妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として」『妙一記念館本仮名書き法華経 研究編』霊友会.

要点

以下の8点の比較により、妙一本が足利本に先んずるものであることを主張する。足利本は1330写の識語を持つが、妙一本はこれを欠く。

  1. 「聞きたまふ(る)」について、妙一本が古態の下二段を残し、足利本が四段を用いる。
  2. 可能の「コト得」(旧)と「コトヲ得」(新)について、天理本がより古態を残し、妙一本はコト得・コトヲ得が混在、足利本はコトヲ得のみを用いる。
  3. 天理本に、「ある種のよみぐせ」である「あふたてまつる」(あひたてまつる とありたい)が見られ、妙一本にはこれを受け継ぐ形で「したがふたてまつる」がある。
  4. 「汝等」の読みが、妙一本は古形のナンダチ、足利本はナンダチ・ナンヂラが混在する。
  5. 「蒙」「被」の和訓に、妙一本はカウブルのみ、足利本はカウブル・カブルが混在する。
  6. 妙一本の形容動詞ナリ活用に対して足利本ではタリ活用が対応する例がある。
  7. 妙一本には音便表記が見られないが、足利本には例がある。
  8. t入声音は、妙一本はチ表記(じちに、枯渇[こかち])、足利本はツ表記(じつに、こかつ)

雑記

  • 年1くらいでこういうの書きたい!卒論でも書かせたい!