ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

長尾光之(2006.10)中国語における文末疑問助詞の変遷

長尾光之(2006.10)「中国語における文末疑問助詞の変遷」『行政社会論集』19(2).

要点

  • 疑問の語気助詞の変遷を、以下の資料を対象として論じる。
  • 論語(春秋松~前漢、「古典中国語」)、史記前漢)は概ね同一で、「乎」が優勢
    • p.104
  • 漢訳仏典と世説新語(5C中心)は主に「不(否)」
    • 生経(3-4C):乎>耶>不
    • 雑宝蔵経:不
    • 百喩経:耶・不
    • 妙法蓮華経:不>耶>乎
  • 世説新語(5C):不が優勢
  • 盛唐以降の唐詩:「不」に代わって「無」が優勢になる。
    • 不の中古音は pɪə̆u または pʏə̆t であり、
    • 無は mʏu であったものが、唐代には非鼻音化することで mbʏu となり、音的類似によって*1不に替わったのではないか。
  • その後、語頭子音の軽唇音化により w- に変化したことで、磨・摩などが用いられるようになり、現代語の吗に繋がってゆく。

雑記

  • 隠遁したいね

*1:似てるのか?