ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

藏本真由(2018.3)前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化

藏本真由(2018.3)「前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化」『国語語彙史の研究』37

要点

  • 現代にかけて、「気がする」に意味変化が起こっていることの指摘
    • ただ其当時に立ち戻りたい様な気もした漱石・思ひ出す事など)
    • この間より、ちょっと大きくなった{気がする/ ようだ}。
  • 「気がする」のモダリティ形式としての発達と捉える

気がするの意味変化

  • 特に、前接要素と形態的バリエーションについて見る
  • 様態・引用形式の有無
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    • 近代:「ような気がする」が多い
    • 現代:特にくだけた文体で「ような」を脱落させる
    • 「ような」の認識的意味を「気がする」が取り込む形で、「気がする」単独で認識的意味を捉えられるようになった*1
  • 前接要素が形容詞の場合、
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    • 近代:ほぼ感情形容詞で、「気持ち」と可換
    • 現代:「気持ち」の意味が希薄化
  • 形態的バリエーション
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    • 現代:特にくだけた文体で「気がして」が減少、文末用法に偏る

*1:文法化の特徴として指摘されている、語用論的強化(pragmatic enrichment)と意味の希薄化(bleaching)の現象」(p.81)とあるが、語用論的強化はこういう意味変化でいつでも起こる(ことになっている)のであまり説明になっていないと思う