山田潔(2015.3)「『玉塵抄』の並列表現:「ツ」「タリ」の用法」中村綠郎編『日本語史の研究と資料』明治書院
要点
- ツ・タリによる並列表現に関して、玉塵抄の定点観測に基づき、タリがツを侵食する過程を見る
ツの用法
- V1V2ツ:アガツヽサガツヽ -対義と類義があり、 V1ツV2ツには、句と句を並列する表現は少ない
- ツナドスル
- ツナドスルの例示:薬ヲノウツナドシテイキウトテ従生シコトハ无用
- 「タリナドスル」はない
タリの用法
- ツに比して用例は少ない
- V1タリV2タリ:煉タリ煮タリスル金ヤ石ナトノ薬ヲハ外舟卜云ソ
- C1(句)タリC2タリ:春夏カケテ修シタリ声ヲキイタリスルソ
- C1タリC2φの方が多い:ハシヲカケタリ谷川一本木ヲ打ワタイテトヲルφコトソ
相違点
- タリは並列の性格が強いが、ツは並列を承けることもできる、その根拠として、
- タリについて、 C1タリC2φ は存するが、C1連用形C2タリは存しない
- ツについて、C1連用形C2ツは存する:カユイ所ヲカキ物ヲカキマゼツスルコトソ
- そのため、〜タリ〜ツはあるが、〜ツ〜タリはない
まとめ
- ツは語と語の並列、タリは句と句の並列
- 句の並列に関してはまだどちらも整っていない
- タリは並列の性格が強く、ツは統叙の性格も持つ
- タリはツにおける句と句の並列から侵食して、語に至ったのではないか