京健治(1998.2)「並立列挙表現形式の推移」『島大国文』26
要点
- ~シ~シの成立以前の並立表現のあり方について
シ
- 用例推移を見ると、
- 虎明本・天理本のマイシの例が早い
- その後、ウシの例が出る
- 近世後期にVシの例がある
- シの成立について、
- 従来は形容詞語尾説が取られてきたが、鈴木(1990)はそこにマイの関与があることを指摘
シ成立以前
- 以下のように、不十分終止(終止形中止法)がこの領域を担っていたと考えられる
- 形容詞終止形中止法
- 駆けやぶって通らうとするところで、暗さは暗し、しかしか入道の孫と知らず。(天草版平家)*1のような例が、
- 山も高し、谷も深し、四方は岩石ぢやほどに、(天草版平家)のような句の並列に展開
- 助動詞終止形
- 甲斐、信濃の源氏共は案内は知っつ、富士の腰から括手にまはる事もござらうず(天草版平家)のような助動詞終止形の不十分終止用法が、
- 甲の綴をかたむけて、橋は引いつ、敵にはあひたし、綴をかたむけて立ったところに(天草版平家)のように並立で現れる例がある
- 動詞終止連体形
- ならびもない臆病な者で馬は弱し、敵はつづく、せん方なさに馬よりとびおりて、(天草版平家)
- 以下の点が問題として残る
- 院政鎌倉期の不十分終止には形容詞が多く、助動詞はアリを語構成に持つものに偏在する
雑記
- キックボードが欲しい
追記(2020/06)
- 不十分終止の衰退とシの発達は相関するようにも見えるけど、多分疑似相関だと思う
*1:このあたり、天草平家の例が多いが原拠本からの直訳である可能性があり、やや根拠として薄いと思う(虎明本の例も挙げられているが。