ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

原口裕(1978.11)連体形準体法の実態:近世後期資料の場合

原口裕(1978.11)「連体形準体法の実態:近世後期資料の場合」『春日和男教授退官記念語文論叢』桜楓社

要点

  • ノ準体の明確な定着は天保以降である

推移

  • 明和期洒落本においては全体的に頻度は少ない
    • ノ準体は受け型(内の関係、モノ型)に多く、
    • φ準体はトイウに慣用され、
    • 括り型(外の関係、コト型)にもノ準体がある
  • 寛政~文化期では、
    • 遠鏡と三馬滑稽本で使用率が同程度
    • 遠鏡にはφ準体もノ準体もあり、統一されていない
    • φ準体はVガ形容詞、トイウハなどの慣用を除いても、まだ多い
    • 男女差があるかもしれない
  • 天保以降、ノの定着が十分に窺える
    • ガ・ヲ・ハに比してニにはφ準体が依然として残り、モも揺れが激しい
    • 格標示の機能が弱いためであろう

文体差

  • 以上の推移の中で、膝栗毛、お染久松袂色読販、夢酔独言にはノがほぼ見られない
  • φ・ノの準体の差は、資料の文体的特徴の指標にもなりそうである

雑記

  • 春日和男教授近影、ダンディである